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DNAのミスマッチ塩基対の光スイッチとして機能するルテニウム錯体

Bartonらは,DNAのミスマッチ塩基対に対して強く発光するルテニウム錯体について報告しています。それによると,2分子の3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリン(Me4phen)と,1分子のジピリド[3,2-a:2',3'-c]フェナジン(dppz)が配位したルテニウム錯体[Ru(Me4phen)2dppz]2+は,DNA存在下で光スイッチとして機能し,650-660nm付近に極大発光スペクトルをもつ光を放出します。この錯体は正常なDNA二本鎖と比べ,ミスマッチ塩基対をもつDNA二本鎖において20倍以上の高い結合親和性を示し,発光寿命も約5倍延びることが見出されています。また,銅錯体を用いた消光実験から,ミスマッチ塩基対のマイナーグルーブ側からルテニウム金属が挿入されることが強く示唆されており,さらにルテニウム錯体のdppz配位子がDNA二本鎖に深く挿入されることで,水による消光が大きく抑えられると推測されています。このように,[Ru(Me4phen)2dppz]2+はミスマッチ塩基対の光スイッチとして機能することから,DNAの修復失敗の検出や初期ガン診断への応用が期待されます。

T0847, D4379

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