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“レクチン”とは
【発見】
1888年にエストニアのPeter Hermann Stillmarkは、植物であるトウゴマ(ヒマ)の実から赤血球を凝集するタンパク質成分(ヘマグルチニン)を発見し、この分子はリシンと命名されました1)。日本の野口英世も1900年代初期にクサリヘビ科の毒液中からレクチンを見つけ、カブトガニからは無脊椎動物のレクチンとしてリムリンを発見しました2,3)。
【命名】
植物から検出される血液型特異的に赤血球凝集を示す物質として、<ラテン語の “lego/legere(読む・選ぶ・集める)”>+<タンパク質を表す接尾語 “-in”>にちなんで、Wlliam C. BoydとElizabes Shapleighによって1954年にレクチンと名付けられました4)。
【定義】
1980年にIrwin J. Goldstein、R. Colin Hughes、Michel Monsigny、Toshiaki Osawa、Nathan Sharonらが、「細胞を凝集させたり、多糖類や糖タンパク質を沈降させる活性を持ち、免疫反応の産物(抗体)ではない糖結合タンパク質」としてレクチンを定義しました5)。
レクチンのなかには結合部位が多価ではないために細胞を凝集できないものもある一方で、糖に特異性を示す糖転移酵素、グリコシダーゼ、糖質関連トランスポーターやキナーゼが細胞を凝集させることもあるため、これらに適用できる「結合する糖を修飾しない糖結合タンパク質」という広義の定義をJan KocourekとVáclav Hořejšíが1981年に示しました6,7)。分類については糖結合特異性や遺伝子ファミリーで整理されることが多いですが、種の違いを含めた個性と豊富な機能を示します8)。
【用途】
特異性の違う複数のレクチンに対し、異なる動物由来の赤血球が示す凝集反応の違いからヒントを得て1900年にKarl LandsteinerがヒトのABO式血液型(糖鎖抗原)を発見し、1930年にノーベル賞を受賞しました9)。
細胞ごとに異なる糖鎖の分析やプロファイルに古くから利用されていますが、近年「レクチンマイクロアレイによる糖鎖プロファイリング」や「DNAバーコード標識レクチンによるシングルセル糖鎖解析」などの技術が開発され、細胞糖鎖の先端研究でレクチンが活躍しています10,11)。
製品
赤血球凝集素 レクチン(遺伝子組換えリコンビナント)
- R0225
- Recombinant Polyporus squamosus lectin (= rPSL1a) expressed in Escherichia coli
- R0226
- Recombinant Laetiporus sulphureus lectin N-Terminal Domain (= rLSL-N) expressed in Escherichia coli
- R0227
- Recombinant Marasmius oreades agglutinin (= rMOA) expressed in Escherichia coli
- R0228
- Recombinant Sclerotium rolfsii lectin (= rSRL) expressed in Escherichia coli
- R0229
- Recombinant Griffithsia sp. lectin (= rGRFT) expressed in Escherichia coli
- L0169
- Lectin, Fucose specific (= AOL) from Aspergillus oryzae (5mg/mL, PBS pH6.5)
R0225、R0226、R0227、R0228、R0229は国立研究開発法人産業技術総合研究所からライセンスを受けて製品化しました。
L0169は月桂冠株式会社からライセンスを受けて製品化しました。
細胞糖鎖について
- 細胞の表面は色々な糖鎖に覆われている
- 糖タンパク質、糖脂質、グリコサミノグリカン(GAG)として存在
- 生物種によって構造が違う
- 細胞の種類によって表面の糖鎖が異なる
- 疾患により糖鎖構造が変化
- 細胞間コミュニケーションの信号役
赤血球凝集活性の比較
96 wellプレートに各種レクチン溶液の2倍PBS希釈系列(25 μL)を準備し、ジャパン・バイオシーラム社の動物保存血液を5-10倍量のPBSで3回洗浄後に、PBSで2% (v/v)に調整した赤血球を各50 μL加えて室温で30分間静置して観察。
関連製品カテゴリーページ
リコンビナントレクチンの糖結合特異性、ビオチン化レクチン、レクチンアガロース (LecBeads) は、以下のリンク先のカテゴリーページでご覧いただけます。
引用文献
- 1) Über Ricin, ein giftiges Ferment aus den Samen von Ricinus communis. L. und einigen anderen Euphorbiaceen
- 2) Snake venom in relation to haemolysis, bacteriolysis, and toxicity
- 3) On the multiplicity of the serum haemagglutinins of cold blooded animals
- 4) Specific Precipitating Activity of Plant Agglutinins (Lectins)
- 5) What should be called a lectin?
- 6) Defining a lectin
- 7) レクチン 第2版 ― 歴史,構造・機能から応用まで
- N. Sharon, H. Lis 著, 山本 一夫, 小浪悠紀子 訳, シュプリンガー・ジャパン編, 丸善出版, 東京, 2006.
- 8) 「レクチン」用語解説を始めるに当たって
- 9) Zur Kenntnis der antifermentativen, lytischen und agglutinierenden Wirkungen des Blutserums und der Lymphe
- K. Landsteiner, Zentralbl. Bakteriol. 1900, 27, 357.
- 10) Evanescent-field fluorescence-assisted lectin microarray: a new strategy for glycan profiling
- 11) scGR-seq: Integrated analysis of glycan and RNA in single cells