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p型有機半導体:可溶性DNTT前駆体

 プリンテッドエレクトロニクス(PE)は,印刷技術を用いることでローコストで大量に電子回路を作成することを可能にする技術として注目されています。プラスチックフィルムや紙などのフレキシブルな基板上にPEの技術を用いて回路を作成することで,フレキシブルなセンサーやディスプレイ・太陽電池が実現可能となります。一方,これらセンサー等に用いられる回路を印刷で形成するには,高性能な可溶性有機半導体が必要になります。
 瀧宮らが開発したDinaphtho[2,3-b:2',3'-f]thieno[3,2-b]thiophene (DNTT)は,大気下安定で高い移動度を示す高性能p型有機半導体材料として幅広く使われています1)。DNTTは一般的な有機溶媒に難溶であるため,溶液プロセスでデバイスを作成するにはDNTTを可溶化させる必要があります。そこで,熱脱離可能な置換基を導入したendo-DNTT-PMI (1)とexo-DNTT-PMI (2)は,DNTTの可溶化に有効なDNTT前駆体として注目されています。
 DNTT-PMIは,約200 °CでN-フェニルマレイミド部位が脱離してDNTTに変換されます。
 これにより,基板上にDNTT-PMIを塗布後,加熱することでDNTT薄膜を溶液プロセスで作成することが可能となり,実際にトランジスタや不揮発性メモリの作成にも成功しています2)
 さらに,帝人株式会社の協力の下,弊社製品であるDNTT-PMIを用いて有機電界効果トランジスタを作成し評価を行ったところ,exo-DNTT-PMIにおいてμmax = 2.33 cm2/Vs, endo-DNTT-PMIにおいてμmax = 1.18 cm2/Vs の高いホール移動度を示しました。

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