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イオン液体 / Ionic Liquids

 合成反応に用いられる有機溶媒は一般的に揮発性を有し,その蒸気は人体に悪影響を与え,時に公害や火災の原因となっています。また,これらの有機溶媒は反応後,ほとんどが再利用されず廃棄されています。近年,これらの問題を克服するためイオン液体を反応溶媒として利用する試みが盛んに行われています。イオン液体は蒸気圧がほとんどないことから引火性,可燃性がなく取り扱いが容易です。また,イオン液体を溶媒として用いた場合,溶質はイオンのみに溶媒和されるため,水や有機溶媒を用いた時とは全く異なった環境下で反応が進行します。さらに,ある種のイオン液体は水や極性の低い有機溶媒に溶け難いという性質を有しています。この性質を利用することにより,有機溶媒を用いて生成物や副生物を抽出し,さらにイオン液体を回収,再利用することが可能です。以下にイオン液体を利用した反応例を示します。
 均一系キラル遷移金属触媒を用いた炭素−炭素二重結合の不斉水素化反応では,触媒の回収や,生成物の分離がしばしば問題となります。J. Dupontらはアルコールとイオン液体の2相系で反応させた例を報告しています1)。それによると反応後,生成物はアルコール層に存在し,ルテニウム触媒はイオン液体層に存在します。そのため,デカンテーションにより生成物と触媒を簡単に分離することができます。そして,イオン液体層に存在する触媒はその活性を損なうことなく繰り返し使用することが可能です。
 パラジウム触媒を用いたヘック反応では通常,DMFやアセトニトリルなどの極性溶媒が用いられています。そして,基質として反応性の低いアリールブロミドやクロリドを用いる場合は触媒活性を維持するため,ホスフィン配位子を添加します。J. Xiaoらは溶媒としてイオン液体を用いることで,ホスフィン配位子を添加することなく良好な収率で生成物が得られることを報告しています2)
 ウィッティヒ反応は炭素−炭素二重結合を形成するための有用な反応です。しかしながら,その問題点として生成物と副生するトリフェニルホスフィンオキシドの分離が挙げられ,通常は結晶化やクロマトグラフィーによって分離,精製が行われています。それに対し,イオン液体を溶媒として用いた場合は反応終了後,エーテル抽出とトルエン抽出を組み合わせることで生成物とホスフィンオキシドを容易に分離することが可能です。さらに溶媒であるイオン液体は繰り返し利用可能です3)
 スティル反応はパラジウム触媒の存在下,有機スズ化合物と求電子試薬を温和な条件で炭素−炭素結合を形成させる有用な反応です。X. Zhangらはイオン液体を溶媒として用いたビニルトリブチルスズとヨードシクロヘキセノンの反応を報告しています4)。それによると反応終了後,生成物はエーテルで抽出することができ,触媒はイオン液体に保持され,そして繰り返し利用することが可能です。このイオン液体/触媒層は空気や水分に安定で,長期間保管しても失活することなく使用できます。
 その他に,鈴木-宮浦カップリング反応5),マイケル付加反応6),ディールス-アルダー反応7),フリーデル-クラフト反応8),酵素反応9)などに適用され,その有用性が報告されています。環境に配慮した合成法が求められている中,イオン液体は収率の向上だけでなく,安全で再利用可能な溶媒として大変注目されています。

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