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原子移動ラジカル重合(ATRP)と可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合: 材料科学者や生命科学者の研究ツール

原子移動ラジカル重合 (atom transfer radical polymerization, ATRP)と可逆的付加開裂連鎖移動 (reversible addition–fragmentation chain-transfer, RAFT)重合は、精密ラジカル重合 (Controlled Radical Polymerization, CRP)のなかでも非常によく利用されています1)。 ATRPとRAFT重合は、ポリマー構造制御が可能、かつ適用範囲が広いことから、材料科学者や生命科学者の材料開発の可能性を広げました。スターポリマーやハイパーブランチポリマーといった特殊構造ポリマーの合成が容易であること、様々な基板やナノ粒子表面からのグラフトが可能であること、末端構造制御によりタンパク質とのコンジュゲーションが可能であることから、例えば潤滑剤などの工業用途、バイオコンジュゲーションやDDSなど医療応用の研究に使用されています2,3)

ATRPとRAFT重合の違い

ATRPとRAFT重合いずれも、機能性モノマーの合成が容易でフリーラジカル重合にも使用されるアクリルモノマーやスチレンモノマーなどのビニルモノマーの重合に有用であり、分子量・分子量分布・ポリマー構造の制御が可能であるため、材料科学者や生命科学者に好まれます。下記にATRPとRAFT重合の利点と欠点を含む比較を記載しています。ATRPおよびRAFT重合の両者とも次々と改良法が発表されているため、ここでは標準的で堅牢な方法について記載しています。


ATRP RAFT重合
使用試薬
末端 原子移動ラジカル重合(ATRP)の重合後末端 可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合の重合後末端
末端除去 主にポリマーの安定性向上のために行われる
nBu3SnHを使用する方法4)、Pd/CとH2を使用する方法5)、10-Phenylphenothiazineと光を使用する方法6)、など
主に着色と臭気を除くために行われる
ラジカル誘導還元、ラジカル付加開裂カップリング、加熱分解、10-Phenylphenothiazineを使用した光還元6)、など7,8)
末端修飾 例)文献9, 10
原子移動ラジカル重合(ATRP)の重合後末端修飾
例)文献7, 8
可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合の重合後末端修飾
水を含む溶媒中での重合 通常困難 可能
酸性モノマー 不適 可能
pH 配位子がプロトン化するため低pHに不適 RAFT剤が分解するため高pHに不適
酸素耐性 通常ないが、複数の酸素耐性ATRP法が報告されている11) PET-RAFT重合で酸素耐性が高いことが知られている12)
その他の利点 末端処理なしでも着色が問題になりにくい フリーラジカル重合の系にRAFT剤を追加する形になるため、既存設備を利用できる可能性がある

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モノマー別 適切なATRP開始剤・配位子やRAFT剤の代表例

実施例の多いアクリラート、アクリルアミド、メタクリラート、メタクリルアミドの重合において、それぞれ使用されるATRP開始剤やRAFT剤の代表例を下表に示します。
ATRPの場合はモノマーに応じた適切な開始剤と配位子の選択が、RAFT重合の場合はモノマーに応じたRAFT剤の選択が、それぞれ十分な制御を実現するために重要です。

ATRPの代表例

モノマー 引用文献 開始剤 配位子 触媒
アクリラート
アクリラートモノマー
文献13 Methyl 2-Bromopropionate Me6TREN Copper(0) spieces
アクリルアミド
アクリルアミドモノマー
文献16 Methyl 2-Chloropropionate Me6TREN Copper(I) Chloride
メタクリラート
メタクリラートモノマー
文献18 Ethyl 2-Bromoisobutyrate HMTETA Copper(II) Bromide
文献19 2-Hydroxyethyl 2-Bromoisobutyrate TPMA Copper(II) Bromide
メタクリルアミド
メタクリルアミドモノマー
文献22 3-Chloropropionitrile PMDETA Copper(II) Chloride AnhydrousCopper(I) Chloride

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RAFT重合の代表例

モノマー 引用文献 RAFT剤 ラジカル開始剤
アクリラート
アクリラートモノマー
文献14 2-(Dodecylthiocarbonothioylthio)-2-methylpropionic Acid AIBN
文献15 a 4-Cyano-4-[[(dodecylthio)carbonothioyl]thio]pentanoic Acid
or
2-(Dodecylthiocarbonothioylthio)-2-methylpropionic Acid
Triethylborane
アクリルアミド
アクリルアミドモノマー
文献17 4-Cyano-4-[(phenylcarbonothioyl)thio]pentanoic Acid 2,2'-Azobis(2,4-dimethyl-4-methoxyvaleronitrile)
メタクリラート
メタクリラートモノマー
文献20 4-Cyano-4-[(phenylcarbonothioyl)thio]pentanoic Acid AIBN
文献21 2-Cyanopropan-2-yl Benzodithioate AIBN
メタクリルアミド
メタクリルアミドモノマー
文献20 4-Cyano-4-[(phenylcarbonothioyl)thio]pentanoic Acid ACVA

a oxygen induced polymerization

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引用文献

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