空気中安定で取り扱いやすい塩化亜鉛(II)等価体

ジクロロ(N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)（1）は，塩化亜鉛(II)にN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を配位させた錯体です。塩化亜鉛(II)は有機亜鉛試薬の調製に広く使用されていますが，潮解性があるため有機亜鉛試薬調製時に加水分解を受けやすく，またTHFやエーテル等への溶解時には発熱を伴います。その為，塩化亜鉛(II)のTHFやエーテル溶液が市販されていますが，吸湿分解しないよう開封後の保管に注意を要します。一方，1は空気中で吸湿分解せず安定であり，塩化亜鉛(II)に比べると取り扱いや保管も容易です。さらに，金属交換による有機亜鉛試薬の調製では吸湿分解を抑えるのに最適であり，シロール類の合成などにも取り入れられています。