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【糖鎖トピックス】高硫酸化ヒアルロン酸に新たな機能

出血誘発がない放射線腸管障害の防護薬開発に期待

東京化成工業株式会社(TCI) 糖鎖技術研究所と国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門放射線医学研究所(量子研) 放射線規制科学研究部組織再生治療研究グループの中山文明グループリーダー、三浦太一研究員らは、TCIが製品化した高硫酸化ヒアルロン酸に放射線腸管障害1) に対する防護効果が得られ、かつ出血誘発もないという新たな機能を見出しました。放射線治療で腸管などの障害を防ぐ薬剤開発への応用が期待できます。
 

硫酸化ヒアルロン酸: FGF保護作用を持つ硫酸化糖鎖
硫酸化ヒアルロン酸: FGF保護作用を持つ硫酸化糖鎖

ヒアルロン酸はヘパリンと同様にグリコサミノグリカンに分類される多糖です。ヒアルロン酸を硫酸化した硫酸化ヒアルロン酸は、既にFGF2等との結合が報告1)されており、iPS細胞の未分化能維持培養への応用が報告されています2)。TCIでは、ヒアルロン酸を高精度に硫酸化する技術で硫酸化ヒアルロン酸を大量合成する技術を開発、製品化しています(高硫酸化ヒアルロン酸:製品コード H1739)。
 

硫酸化度によりFGF2との結合を調整可能
硫酸化度によりFGF2との結合を調整可能

低硫酸化HAはヘパリンより弱い結合能を示し、高硫酸化HAはヘパリンより強い結合能を示す


これまでの研究で、さまざまな放射線治療の防護方法が検討されており、放射線障害から小腸を保護する効果があるFGF1(線維芽細胞増殖因子-1、fibroblast growth factor 1)が検討されてきました。FGF1はヘパリンの存在下でその構造が安定化し、高い防護効果が得られることが報告されています3,4)。しかしながら、ヘパリンには血液凝固を阻害し出血を促す作用があり、出血が起こる可能性のある放射線腸管障害の患者に対して適用することが難しい技術です。そのため出血を促進することなくFGF1の構造を安定化できる薬剤の開発が望まれてきました。
量子研のグループでは、高硫酸化ヒアルロン酸の増殖因子保護作用に着目し、放射線腸管障害に対する防護効果について評価しました。その結果、硫酸化ヒアルロン酸がFGF1とヘパリンの組み合わせと同等の効果を持つことを明らかにしました。さらに、高硫酸化ヒアルロン酸の血液凝固能を評価したところ、血液抗凝固能をほとんど持たないこともわかりました。
これらの結果は、高硫酸化ヒアルロン酸がへパリンとFGF1の組み合わせでは課題となる出血の誘発の回避を可能にする、出血の危険性が低い放射線障害防護薬として有望であることを示しています。
 

今回明らかになった硫酸化ヒアルロン酸の特徴

  • 放射線腸管障害に対する防護効果を持つ。
  • ヘパリンとは異なり、血液の凝固を妨げない。
  • 出血の危険性が低い放射線障害防護薬として有望である。

本研究内容は、米国放射線腫瘍学会が発行する科学誌「Advances in Radiation Oncology」のオンライン版に2022年3月13日に掲載されました。

弊社では、本マテリアルの様々な分野での利用拡大を目指して共同研究を展開してまいります。また、開発者の要望に応じて、硫酸化度や分子量、さらなる修飾などのご相談も受け付けています。

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用語説明

1) 放射線腸管障害
小腸など、放射線感受性が非常に高い消化管に放射線照射することで起きる症状のことです。腫瘍に十分な線量を照射できない場合もあり、障害を防ぐ薬剤の開発が求められています。
2) FGF1
FGF1(Fibroblast Growth Factor 1、繊維芽細胞増殖因子-1)は、多くの組織に分布しています。血管新生因子や神経栄養性因子として機能する細胞増殖因子で、細胞培養など研究用としても使用されます。
3) ヘパリン
ヘパリンは、ウロン酸とグルコサミンで構成される二糖が1単位となって、それらが数十から数百回繰り返した多糖。ヘパラン硫酸もこの一群に分類され、特に高度に硫酸化されたものはヘパリンに分類されます。
4) iPS細胞の未分化能維持培養
iPS 細胞の産業応用に必要な培養方法で、未分化能を保ちながら大量に細胞を培養する技術のことですが、現時点では容易な培養法は開発できていません。

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Advances in Radiation Oncology論文情報

タイトル:
High-sulfated hyaluronic acid ameliorates radiation-induced intestinal damage without blood anticoagulation
著者:
Taichi Miura, Ph.D.,1 Mitsuko Kawano, Ph.D.,1 Keiko Takahashi, B.S.,1 Noriyuki Yuasa, Ph.D.,2 Masato Habu,2 Fumie Kimura, B.S.,2 Toru Imamura, Ph.D.,1,3 Fumiaki Nakayama, M.D., Ph.D.1
所属:
1. Regenerative Therapy Research Group, National Institutes for Quantum Science and Technology (QST), Chiba, Japan
2. Tokyo Chemical Industry Co., Ltd. (TCI), Tokyo, Japan
3. School of Bioscience and Biotechnology, Tokyo University of Technology, Hachioji, Japan
DOI:
https://doi.org/10.1016/j.adro.2022.100900

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