ナノメートルオーダーに成形した無機半導体結晶は量子ドットと呼ばれます。同じ組成であってもドットの粒子径によってバンドギャップを制御できる(量子閉じ込め効果)ほか,高い発光量子収率やシャープな発光スペクトル,ブロードな吸収スペクトルなどの優れた光学特性からも量子ドットの研究は注目を集めています。特に,粒子の表面を有機化合物でキャッピングしたコロイド量子ドットは,多くの溶媒で分散液が作製できる利点も加わり,ディスプレイや太陽電池などのプリンテッドエレクトロニクス,高精細な生体イメージングなど様々な用途で応用が進められています。
コロイド量子ドットにおけるキャッピング剤の役割は,粒子の分散性を決定するだけでなく,ダングリングボンドの補填による安定性の向上や薄膜状態での粒子間架橋など多岐に渡り,後天的にコロイド量子ドットの物性を操作することができるようになります。合成時は高い分散性を有するオレイン酸やオレイルアミンなどの長鎖アルキル化合物がキャッピング剤として用いられますが,分散液中あるいは薄膜状態でも他の機能性キャッピング剤に交換することが可能です。