フタロシアニンビルディングブロック

　フタロシアニン(Pc)はポルフィリンの類縁体であるテトラベンズテトラアザポルフィン(H₂-Pc)，およびその中心に金属を持つ金属フタロシアニン(M-Pc)を含めた化合物の総称です。中心に金属を有するM-Pcはその構造に起因する特異な物理的特性を有しており，その製法，機能に関する広範な研究が行われています。M-Pcの数ある製法の中で，1,2-ジシアノベンゼンや1,3-ジイミノイソインドリンを原料として用いる方法は，高純度品が得られ，最も一般的な製法として用いられています¹⁾。M-Pcはテトラアザポルフィン環の大きなπ電子系を有しており，光機能材料として多方面で研究され，一部で実用に供されています。例えば，耐候性に優れた青や緑の顔料，光電効果を応用した光電子機能材料として光ディスク，発光デバイス，太陽電池等が挙げられ，中でも電子写真感光体のキャリア発生層として既に実用化されています²⁾。また，M-Pcは酸化還元特性を有しており，触媒としての用途の他，印加電位の変化により可逆的に変色する現象を応用したエレクトロクロミック素子³⁾として，さらに，中心金属の選択やペンダント型高分子化により消臭，抗菌剤としての用途も拓けています¹⁾。この他にもM-Pc誘導体によるセンサー⁴⁾，液晶⁵⁾，癌の光化学治療⁵⁾等，研究事例が多数あり，さらなる応用開発が期待される21世紀型機能素材といえます。