植物成長調節物質の代表例として植物ホルモンがあげられます。植物ホルモンは植物が自身の生理機能を調節するために生産する化合物の総称で、微量で作用するものを指します。天然の植物ホルモンにはオーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ジャスモン酸、ブラシノステロイドの7種の化合物群が知られています(図1)。また、非天然物でも同様の活性を有するもの、およびその阻害作用を有するものも本項で紹介します。
図1. 天然の植物ホルモン
もともとは光屈性調節因子として発見されました。現在では、初期発生、発芽、成長、花芽形成、細胞分裂制御など数多くの現象に関与していることが明らかになっています。天然に見出されるものは3-インドール酢酸、3-インドール酪酸、フェニル酢酸ですが、非天然の化学合成品にも同様の作用を持つ物質が見出されています。
サイトカイニンとはオーキシンとともに与えたときに、細胞分裂とシュート(1つの茎頂分裂組織に由来する茎と葉)形成を引き起こす物質と定義されています。構造上はアデニンの6位のアミノ基にイソペンテニル基が結合したもの、その末端のメチル基が水酸化されたものが代表的です。
不飽和脂肪酸であるリノレン酸から生合成される物質で香気を有します。葉の老化促進、実生の成長抑制、ジャガイモの塊茎形成誘導などの生理作用があります。
セスキテルペンに分類されることがありますが、実際にはカロテノイド(C40)を前駆体として生合成されます。種子、球根の発芽、環境ストレス耐性の強化などの生理作用があります。
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参考文献
- Review:
- 1) L. Taiz, E. Zeiger, in Plant Physiology, 4th ed., Sinauer Associates, Sunderland, 2006.
- 2) 細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ20 新版 植物ホルモンのシグナル伝達, 福田裕穂, 町田泰則, 神谷勇治, 柿本辰男監修, 秀潤社, 2004.
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