薬物がヒト血清アルブミン(HSA)に結合するかどうか、HSAのどの薬物結合サイトに結合するかを調べることは、薬物の体内動態や薬理作用の予測に重要です。HASの薬物結合サイト1（青色部位）と薬物結合サイト2（黄色部位）に結合することが知られている蛍光プローブをご紹介します。
特長
- HSAの薬物結合サイト1または2に特異的に結合
- 簡便で迅速に、薬剤とHSAの結合アッセイが可能
Dansylamide（製品コード：D5405）は薬物結合サイト1に、Dansylglycine（製品コード：D5406）はサイト2に結合することが知られている蛍光プローブです1,2)。Changらが見出したBD140（製品コード：D4898）は、HSAの薬物結合サイト2に特異的に結合する新たな蛍光プローブです3)。これらの蛍光プローブは、HSAに結合することで蛍光極大波長が変化し、各結合サイトに競合的に結合する薬物によって蛍光が減弱するため、薬物の結合サイトを確認することができます。薬物がHSAのどちらの薬物結合サイトに結合するかを確認するための有用なツールです。
典型的な使用方法
【試薬】
- 1% DMSO in 10mM phosphate buffer (pH 7.2-7.5)
- ヒト血清アルブミン(HSA) (脂肪酸フリー)
- 各種サンプル化合物
- 各HSA結合蛍光プローブ： Dansylamide [D5405]）、Dansylglycine [D5406]、BD140 [D4898]
【操作】
- HSA、各蛍光プローブ、各種サンプル化合物を調製する。
- 蛍光測定用黒色96ウェルプレートにそれぞれをアプライする。（例：各50 µL）
- 緩やかに撹拌し、室温（20-25℃）、遮光にて30分間静置する。
- プレートリーダーで蛍光を測定する。
※多く使用される陽性コントロール薬物は、薬物結合サイト1ではWarfarin、薬物結合サイト2ではIbuprofenです。
※界面活性剤は反応に影響を与える場合があります。界面活性剤は反応に影響を与える場合があります。条件をご考慮のうえでのご使用をお勧めします。
※薬物結合サイト2に対する蛍光プローブであるDansylglycine [D5406]およびBD140 [D4898]をご使用の場合は、脂肪酸フリー（FA-）のHSAのご使用をお勧めします。（こちらの製品パンフレットをご参照ください。）
使用例
＜アッセイ条件＞
Buffer: 1% DMSO in phosphate buffer (pH 7.2-7.5), HSA (fatty acid free): 5 µM (50 µL/well), Drugs: each concentration (50 µL/well), Each fluorescent probe: 80 µM (50 µL/well), Incubation: 20-25°C for 30 minutes, Measurement: plate-reader, excitation=365 nm, emission=480 nm (Dansylamide and Dansylglycine) or 585nm (BD140).
【弊社における試験結果】
- Dansylamide [D5405]のHSA（脂肪酸フリー）への結合
薬物結合サイト1に結合するWarfarin、Phenylbutazone、Triiodezenzoic Acid において阻害されました。一方、DansylamideのHSAへの結合は、薬物結合サイト2に結合するIbuprofenやFlurbiprofenでは全くあるいはほとんど阻害されませんでした。 - Dansylglycine [D5406]とBD140 [D4898]のHSA（脂肪酸フリー）への結合
薬物結合サイト1に結合するWarfarinやPhenylbutazoneではほとんど阻害されませんでした。一方、DansylglycineのHSAへの結合は、薬物結合サイト2に結合するIbuprofen、Flurbiprofen、Triiodezenzoic Acidでは阻害されました。
上記の結果から、Dansylamideを用いることによって薬物がHSAの薬物結合サイト1に結合するかどうかを、DansylglycineとBD140を用いることによって薬物がHSAの薬物結合サイト2に結合するかどうかを確認することができます。
参考文献
- 1) G. Sudlow, D. J. Birkett, D. N. Wade, Mol. Pharmacol. 1975, 11, 824.
- 2) G. Sudlow, D. J. Birkett, D. N. Wade, Mol. Pharmacol. 1976, 12, 1052.
- 3) J. C. Er, M. Vendrell, M. K. Tang, D. Zhai, Y.-T. Chang, ACS Comb. Sci. 2013, 15, 452.
- 4) F. Nakashima, T. Shibata, K. Kamiya, J. Yoshitake, R. Kikuchi, T. Matsushita, I. Ishii, J. A. Giménez-Bastida, C. Schneider, K. Uchida, Sci. Rep. 2018, 8, 932.
- 5) H. Yang, Y. Huang, J. Liu, P. Tang, Q. Sun, X. Xiong, B. Tang, J. He, H. Li, Sci. Rep. 2017, 7, 11126.
- 6) Y. Tanaka, H. Okuyama, M. Nishikawa, S. Ikushiro, M. Ikeda, Y. Ishima, Y. Ukawa, K. Oe, J. Terao, R. Mukai, Food Sci. Nutr. 2022, 10, 1070.
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