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HPLC誘導体化試薬
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は微量成分を検出,定量する手段として多用されており,特に生体成分のような複雑なマトリックス中の不揮発性の微量成分が対象の場合には効果的です。そして,より高い感度と選択性を得るため,分析対象物質を検出方法に適したラベル化剤で標識することが行われており,多くのラベル化剤が報告されています。
今井,豊岡らが開発したNBD誘導体とDBD誘導体は,ベンゾオキサジアゾール骨格に起因する長波長の強い蛍光を有しているため,優れた蛍光ラベル化剤として注目されており,脂肪酸やアミノ酸などの分析に用いることができます。例えば,NBD-Clはプロリンなど二級アミンに対しての有用性が早くから報告されていましたが,今井らは ClをFに代えたNBD-F1)をアミノ基の蛍光ラベル化剤としてHPLC分析に応用,良好な結果を報告しています。また,ベンゾオキサジアゾール骨格にジメチルスルファモイル基を導入したDBD-F2)を開発し,逆相HPLCにてアミノ酸の分離定量を行っています。DBD-Fはそれ自身が無蛍光であるため,高い感度でアミノ酸を検出,定量することができます。 また,DBD-COCl3)はアミンやチオール類のほか,水酸基とも反応し,安定な蛍光生成物を与えます。その他,カルボニル基のラベル化剤としてはNBD骨格,DBD骨格にヒドラジノ基を導入したNBD-H,DBD-H4)が,カルボキシル基のラベル化剤としてはピペラジンを導入したNBD-PZ,DBD-PZ5)などが利用可能です。
電気化学検出器(ECD)用としては,フェロセン誘導体やNPCA6)が報告されています。フェロセンは,+0.5Vと比較的低い加電圧で応答することや,酸化還元の可逆性にも優れているため,ECDに最適なラベル化剤として利用されています。また,近年,静岡県立大学の研究グループによって開発されたNPCAは,種々の第1級アミン類と反応,結合した後,THP基を脱保護することにより,6-ヒドロキシクロマン骨格を有する誘導体が得られます。この誘導体はODSカラムを用いたHPLCで良好に分離し,6-ヒドロキシクロマンに起因する強いEC活性を示します。
また,N-(4-アミノブチル)-N-エチルイソルミノールは化学発光ラベル化剤として有用性が報告されています7)。
参考文献
- 1) (a) K. Imai, Y. Watanabe, Anal. Chim. Acta 1981, 130, 377.
- 2) (a) T. Toyo’oka, T. Suzuki, Y. Saito, S. Uzu, K. Imai, Analyst 1989, 114, 413.
- 3) (a) K. Imai, T. Fukushima, H. Yokosu, Biomed. Chromatogr. 1994, 8, 107.
- (b) 東京化成工業(株), 特開平07-238075.
- 4) S. Uzu, S. Kanda, K. Imai, K. Nakashima, S. Akiyama, Analyst 1990, 115, 1477.
- 5) T. Toyo’oka, M. Ishibashi, Y. Takeda, K. Nakashima, S. Akiyama, S. Uzu, K. Imai, J. Chromatogr. 1991, 588, 61.
- 6) NPCA : Succinimidyl (2R)-6-(Tetrahydro-2H-pyran-2-yloxy)-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylate T. Sasaki, T. Fukushima, M. Ohishi, T. Toyo’oka, Biomed. Chromatogr. 2008, 22, 888.
- 7) T. Kawasaki, M. Maeda, A. Tsuji, J. Chromatogr. 1985, 328, 121.