代表的な非ベンゼン系芳香族化合物であるアズレンは不飽和七員環と五員環が縮環した炭化水素で,ナフタレンの構造異性体に当たります。ナフタレンや他の炭化水素化合物が無色であるのに対し,アズレンは濃青色で昇華性の高い結晶であり,その色に由来したスペイン語の青色:Azulにちなんで名付けられたものです。実用的製法は大別して次の3つが知られています。第一はZiegler,Hafnerによって開発されたピリジニウム塩またはピリリウム塩の開環とシクロペンタジエニドとの反応によるもの1),第二は野副,瀬戸らによって開発されたトロポンの2位にハロゲン,メトキシ,トシルオキシ基などを持つ誘導体とシアノ酢酸エステルやマロン酸エステル等の活性メチレン化合物を塩基の存在下反応させる方法2),そして最後は安並,高瀬らによって開発されたオキサアズラノンとエナミンとの反応による方法3)が知られています。またトロポロン誘導体の代表的なものとして知られているヒノキチオールの抗菌作用,トロポロン環を有するアルカロイドのコルヒチンが強い抗腫瘍作用を有していることなどから,トロポロン系化合物の医薬品開発,特に抗癌薬開発への応用に興味が持たれています。