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化学よもやま話
電子ジャーナルとリンクの話
愛知大学 文学部 図書館情報学専攻 教授 時実 象一
「電子ジャーナルの論文を読んでいて興味のある引用文献があれば,すぐにそれをクリックして元の文献を読む」。これは今や研究者の日常となっています。リンク先はさまざまです。たとえば次の米国化学会ジャーナルJ. Am. Chem. Soc. の論文の引用文献を見てみましょう。
図2 のように[ACS Full Text],[PubMed],[CAS],[CrossRef] などがリンク先となっています。
図2.
このうち[ACS Full Text] をクリックすると米国化学会の雑誌論文のどれかにリンクします。この場合は,Acc. Chem. Res. の論文にリンクしました。
図3.
[PubMed] は医学分野で著名なデータベースで,引用された文献の抄録が載っており,一番下のLinkOut をクリックすると論文の本文にリンクできます。
図4.
[CAS] は化学データベースCAplus の抄録にリンクします。「View Full Text Options」をクリックすると論文の本文にリンクします。
図5.
さて最後の[CrossRef] とはなんでしょうか。これは世界の学術出版社が共同で運営している,リンクサービスCrossRef へのリンクです。これをクリックすると,該当論文の電子ジャーナルに直接リンクします。この場合はエルゼビア社が出版するAdvances in Inorganic Chemistry でした。
図6.
さて,こうしたリンクはどのようにして付けられているのでしょうか。一般にウェブページにはリンクがあります。たとえば次の図で,「subscribe」のところにカーソルを置くと,ブラウザの下の行にリンク先のアドレスが表示されています(図7)。
このような場合リンク先はひとつひとつ手作業でウェブページに書き込んでいます。
この例(図 2)の場合,米国化学会が自分の出版した論文の中から検索することは簡単で,リンクもすぐに貼れます。また PubMed や CAS のようなデータベースの場合は,論文情報が整理されているので,これも検索も容易です。さて,最後の例(図 7)のように別の出版社の論文はどうでしょうか。他の出版社のサイトにある論文を探すのはコンピュータでも面倒ですし,またリンク先のアドレスも各社ごとに形式が違っていて,とても自動的にリンクを貼ることはできません。さらに出版社の都合でネットアドレスもどんどん変わってしまいます。こうした問題を解決したのがCrossRef です。
図8.
図9.
執筆者紹介
時実 象一 (Soichi Tokizane) 愛知大学 文学部 図書館情報学専攻 教授
[ご専門] 化学情報学,図書館情報学